私がこの仕事を始めたときから、ずっと心に引っかかっていることがありました。それは、社会が当たり前のように使う「健常」と「障害」という言葉の、あまりにも無防備な2つに分けるという暴力性です 。ひとたびそのレッテルが貼られると、個人の無限の可能性は「障害」という一つの枠に押し込められ、その人の本来の姿が見えなくなってしまいます 。私たちは、この見えない檻をどうすれば壊せるのでしょうか。その問いが、株式会社薫化舎の原点であり、私のライフワークそのものです (薫化舎のプログラムの中には、このような思いが入っています)。
若い頃に出会ったジャック・デリダという哲学者の思想は、私にとって大きな光でした 。彼は、私たちの思考を縛る「二項対立」の構造を解き明かし、それを内側から解体する「脱構築」という方法を示しました 。それは単なる破壊ではありません。むしろ、対立するものの間に引かれた境界線がいかに人工的で、脆いものであるかを暴き、新たな関係性を創造する営みです 。私は、この「脱構築」を、観念の世界だけでなく、現実の社会で、苦しんでいる人々のために実践できないかと考えました。そのための武器が、「科学と知」でした 。
薫化舎の挑戦は、まさにこの「障害/健常」という二項対立を、私たちが独自に開発した特許技術という具体的な手段で解体していくことにあります。
まず私たちは、「障害」という診断名だけで人を判断しません。その代わりに、特許技術(将来解放される)である「特性情報収集技術」を使い、その人固有の認知のクセ、情報の処理の仕方を精密に分析します 。これは、大雑把な分類を拒否し、一人ひとりの内なる世界を深く読み解く試みです。
そして、その人だけの「設計図」が明らかになったとき、私たちの核となる技術「認知リフレーミング®︎」が登場します 。これは、脳の持つ素晴らしい力、つまり自ら変化し再編成する能力(神経可塑性)に基づいています 。例えば、「落ち着きがない」という特性は、「好奇心旺盛で行動力がある」という力に変わるかもしれません。私たちは、科学的なアプローチによって、根本的な問題に向き合って、ネガティブなレッテルをポジティブな価値へと反転させます。これはまさに、二項対立の階層をひっくり返す、実践的な脱構築なのです。
さらに私たちのプログラムは、脳だけでなく、身体全体にアプローチします。例えば「偏食」という課題も、単なる好き嫌いではなく、感覚情報の処理、特に「視覚」のあり方と深く結びついていることがあります 。私たちの特許技術は、その人固有の視覚認知の特性を捉え、なぜ特定の食べ物を受け付けないのか、その根源を探ります 。この科学的アプローチに基づき、味覚を含めた感覚全体に働きかけることで、食事を通じた栄養の最適化を図るのです 。これは、精神と身体を分断して考えるのではなく、両者を統合的に捉え、その人の可能性を最大限に引き出すという、私たちの信念の実践でもあります。
この世に存在する問題の多くは、固定観念や見えない境界線から生まれています。私たちは、それを情緒的な言葉だけで解決しようとは思いません。科学というメスと、哲学という深く物事の本質を問う知性をもって、その境界線を溶かしていきます。スポーツ選手が視覚の課題を克服して世界の舞台で戦う武器を手に入れたり、長年社会から孤立していた若者が自信を取り戻し、大手企業でその能力を発揮したりする姿を見るたび、私はこの仕事の意義を確信します 。
私たちのやっていることは、単なる「支援」ではありません。それは、一人ひとりが持つ固有の輝きを科学と知の力で解き放ち、社会が押し付けたレッテルから自由になるための、静かですが必要不可欠な挑戦なのです。