· 

社会的企業としての生産性(社会的投資収益率/SROI)について

未来への投資:株式会社薫化舎の社会的投資収益率(SROI)に寄せて

今回は、少し長めの投稿になりますが、お付き合いいただけますと幸いです。

日頃より、「株式会社薫化舎は、社会的企業として何を生み出しているのか?」というご質問を多くいただきます。これは、私たちの「生産性」は何か?という本質的な問いだと思いますので、ご説明させていただきます。これは、薫化舎のコストベネフィットアナリシスのひとつでもあります(現在は、特許技術やAI化により、少しでもコストを下げて投資効率を上げる努力をしています)。

「社会的企業の生産性」とは?
この点をより正確にご理解いただくため、まず「従来の企業の生産性」と「社会的企業の生産性」を比較してみたいと思います。

 ○従来の企業の「生産性」
   * 目的: 経済的利益(売上・利益)の最大化
   * 計算式(例): アウトプット(売上・利益) ÷ インプット(投下資本・従業員数)
   * 焦点: どれだけ効率的に儲けたか

 ○社会的企業の「生産性」
   * 目的: 社会的インパクト(生み出した社会的な良い変化)の最大化
   * 計算式(例): アウトプット(社会的インパクト + 経済的利益) ÷ インプット(事業コスト)
   * 焦点: 事業を通じて、どれだけ社会課題を解決し、社会全体にプラスの価値を生み出したか 

私たち株式会社薫化舎は、まさにこの社会的企業の「生産性」を最大化させるべく、事業を設計しています(公的資金は一切使わず、効果的な自立支援を実現する特許技術などへ投資しながら事業を継続しています。経営は大変ですが、やりがいがあります!)。

薫化舎が生み出す社会的インパクト

では、薫化舎はどのように社会的インパクト、すなわち社会的生産性を生み出しているのでしょうか。その仕組みは以下の通りです。(今回は引きこもりの方などの自立支援を例にしますが、能力開発によるキャリアアップ支援も同じ仕組みです)

 * インプット(投下資本)
   私たちが、引きこもりなどの方々の自立プログラムに投じる人件費、施設費、教育コストなど、事業全体の運営コストです。

 * アウトプット(生み出された価値)
   ここが最も重要です。私たちの事業が生み出すアウトプットは、自社の利益だけではありません。 

   * 【直接的な経済価値】
     商品販売やサービス提供による売上・利益。これにより事業を継続させます。

   * 【社会的な価値(社会的インパクト)】
     この部分こそが、私たちの「生産性」の核です。何らかの生きづらさを抱えていた方が自立することで、社会全体に金銭換算可能な価値が生まれます。

     * 生涯賃金の創出: もし自立できなければ得られなかったであろう生涯所得(数千万〜数億円)を新たに生み出します。これは社会に新たな富が生まれたことを意味します。

     * 納税による社会への貢献: 所得を得て納税者となり、社会インフラを支える側に回ります。

     * 社会保障費の削減: 生活保護や医療費、司法・更生費用など、彼らを支えるために使われていた公的コスト(税金)が大幅に削減されます。 

     * 波及効果: ご家族の精神的・経済的負担の軽減や、将来の貧困の連鎖の防止など、金銭換算しにくいプラスの効果も生まれます。

【事例】社会的投資収益率(SROI)90倍の算出根拠
この仕組みを、算出根拠となった具体的な事例でご紹介します。

10年間引きこもり状態にあった青年が、私たちのプログラム(ご家族による投資額:300万円)を経て、22歳で東証上場企業に技術者として就職しました。

もし社会が彼を放置すれば、その後何十年も多大な社会保障費がかかり続け、彼の所得はゼロのままだったかもしれません。しかし、私たちのプログラムによって起立性の問題や認知システムの課題を克服し、彼の人生の歯車は、再び力強く回転を始めたのです。

この「300万円の投資」が生み出すリターンはどれほどでしょうか。大企業に勤務する男性の生涯賃金(平均2億7千万円)を元に試算します。
2億7000万円(生涯賃金)÷ 300万円(投資額) = 90倍

これは、投資額の実に90倍のリターンです。これは「社会的投資収益率(SROI)」と呼ばれる指標であり、私たちの事業がいかに「生産性」が高いかを客観的に示しています。加えて、そのまま社会に出れず福祉関係を活用したライフコースになると、約1億円強の公的資金が彼に必要になります。実質の投資率は100倍を超えます。

この成功は奇跡的な一例ではありません。事実、私たちのプログラムに適合し、ご契約いただいたケースでの自立成功率は93%に達します。

管理栄養士として大手企業で働く女性、本省勤務の公務員や自衛隊幹部、自ら事業を興した起業家、そして提携法人等で正社員として活躍する数十名の青年たち。国公立の医学部や獣医学部への進学者など、私たちの投資は、極めて高い再現性をもって社会に価値を生み出し続けているのです。

生涯賃金という指標を超えて

しかし、私たちが生み出す本当の価値は、その金額の向こう側にあります。それは、閉ざされた部屋の扉が再び開けられること。親子の食卓に笑顔が戻ること。一人の若者が「ありがとう」と言われることで、自らの尊厳を回復することです。
株式会社薫化舎の戦略は、単なる慈善活動ではなく、社会課題の解決を通じて社会全体の富を増大させる、非常に生産性の高いビジネスモデルでもあります。私たちの一円は、社会の損失を利益に転換し、一人の人間の未来を、ひいては社会の未来を創造します。
私たちが蒔いているのは、金銭ではありません。人の可能性という名の種であり、その収穫は、より豊かで、誰もが何度でもやり直せる、再チャレンジが可能な社会そのものなのです。