株式会社薫化舎の前身である「薫化舎(個人事業)」時代、私が最初に取り組んだのは、重度の薬物依存やアルコール依存に苦しむ方々の支援でした。当時、どこへ相談しても解決の糸口が見つからず、藁にもすがる思いで来られた方に対し、私はマンションの一室を借り上げ、24時間の生活指導を通じて自立を目指すプログラムを提供しておりました。
幸いなことに、当時深く関わらせていただいた方々は現在、依存から完全に脱却し、健康で充実した人生を送っておられます。しかし、この成果の裏には、極めて綿密な管理と膨大な人的資源を要するプログラムがあり、それに伴う費用負担も大きくならざるを得ないという課題がありました。「ダメ、絶対ダメ」という標語がありますが、それは単に法律や道徳の問題だからではありません。ご本人だけでなく、そのご家族の人生までも根こそぎ奪ってしまう現実があるからです。この言葉の真の重みを、私たちは現場で痛感してきました。
長年、依存症の方々と寝食を共にし、その苦悩に寄り添う中で、私はある一つの仮説に辿り着きました。それは、再発(リラプス)の根本原因が、従来の定説である「ストレスコーピングの不足」や「脳内報酬系の不可逆的変化」だけにあるのではなく、「環境からの物理的刺激を脳が適切に処理できていない」という、いわゆる感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity)の問題にあるのではないか、という点です。
現場で観察を続けると、多くの方が常に何らかの生理的なストレスに晒されていることに気づきました。「光が眩しすぎる(視覚過敏)」「音が響く(聴覚過敏)」「特定の食感が耐えられない(偏食)」「文字の読み書きが苦痛である」――。彼らは、私たちには想像しがたいレベルの感覚的苦痛を常に抱えており、その不快感を麻痺させるための「鎮痛剤」として、あるいは一時の安らぎを求める切実な欲求として、薬物やアルコールを渇望していた側面が否めなかったのです。
従来のプログラムでは、解毒や一時的な断薬は可能です。しかし、日常生活に戻り、再び強烈な情報の洪水に晒されると、脳は瞬く間に「オーバーヒート(過覚醒)」を起こします。この生理学的な苦痛が取り除かれない限り、いかに優れたカウンセリングや認知行動療法、教育訓練を行っても、その効果は脳に定着しません。これは、ハードウェア(脳の神経系)がエラーを起こしている状態で、最新のソフトウェア(認知の変容)をインストールしようとするようなものです。
この気づきから、私たちは「視覚等(ハードウェア)への介入」→「認知(ソフトウェア)への介入」という階層的なアプローチの必要性を確信しました。依存症の本質を「感覚器処理感受性のエラー」と捉え直し、まず視覚・味覚・聴覚からの情報入力を適正化すること。具体的には、視覚過敏を緩和し、脳への入力負荷を調整する弊社独自の特許によるデバイス「コーンロッドグラス(Cone-Rod Glasses®)」によるハードウェアの修正を最優先としました。
「生理学(Physiology)は心理学(Psychology)に先行する」。 身体的・生理的な不快感を取り除き、身体のOSとも言える自律神経系を安定させて初めて、心理療法(認知リフレーミング)は真の効果を発揮します。最近ではPRしていないこともあり依存症のご相談は減りましたが、この「生理から心理へ」という依存からの回復モデルは、現在の薫化舎が提唱する「認知リフレーミング®」や「ライフコースケア®」の根幹をなす理念として、今も進化を続けています。
注)
①「コーンロッドグラスは、網膜の視細胞(錐体・桿体)の感度特性に着目し、光入力を最適化するために開発された弊社独自の視覚補助デバイスです。」
②この依存用のプログラムは、RNRがベースになっています。依存プログラム単体では、リスクコントロールが不十分になりますので、ご注意ください。
